探究派のブログ

反スターリン主義運動を再興しよう!

 農林中金理事長は言う。「CLOと同じようなリターンを得られる投資は、なかなかない」
、と。これはどういうことか?
 農林中金のみならず、CLOへの巨額に上る投資をおこなってきた都市銀行地方銀行やその他の金融諸機関は、リーマンショック以降もあいもかわらずアメリカ金融市場において有価証券への資金の投下をくりかえしてきた。なぜなら、彼ら日本の機関投資家たちは、国内では生産的投資の部面は縮小し金利水準は低くなっているがゆえに、金融的利得をもとめて、比較的に金利水準の高いアメリカ金融市場での金融的投機(資金運用)にあけくれてきた。これ自体が、日本経済が資本の過剰におちいっているがゆえに、よりいっそうの資本の過剰を回避するためにおこなってきたビヘイビアなのである。
 農林中金にかんしていえば、これは、2001年に農業協同組合森林組合・漁業協同組合を統合して投資銀行へと転換したヘッジファンドである。そして、この転換を機に、金利水準の低い国内市場での資産運用を縮小し、アメリカ金融市場での高金利の外国債の購入を拡大し、金融的利ザヤを稼ぐことに突き進んできたわけだ。日本の金融諸機関は、日本の諸企業が利潤率の低下に見舞われ設備投資を縮小しているという事態に直面してきた。まさに資金を融通する機会を失ってきたがゆえに、これらの諸機関は、アメリカ金融市場での資金の投機的運用に狂奔してきたのである。アメリカ国債の購入のみならず、アメリカ大手金融諸機関がつくったSIV特別目的会社)を発行主体としているCLOなどの証券化商品の購入が、それである。この意味で、このCLOの巨額の購入は、日本の国家独占資本主義の腐朽性のあらわれなのである。
 しかし、それだけではない。「売ってはだめだ!」このような暗黙の合意が日米両権力者のあいだでなされているのだ。驚くべきことに、2019年にアメリカ金融市場で新規に発行されたCLOをアメリカの大手金融諸機関は、ほぼ購入していないのである。ところが、日本の金融諸機関はそれを購入しつづけ、その保有率は世界で発行されているCLOの総額の15%に達しているのである。2019年度だけでいえば、発行数の40%を買っているというのである。しかも、コロナ危機が顕在化し評価損が出始めても、彼らは一切売却しようとしていない。彼らは、「AAA格付けだから、満期まで保有する。4000億円の評価損というのも減損として計上し処理する必要はない」と言うほどに、アメリカ政府とFRB、そして金融資本家が泣いて喜ぶ(内心では、ほくそ笑んでいるだけだが)姿勢なのだ。日米の支配階級の双方の階級的利害を貫徹するために、日本の農林漁業労働者たちの賃金の一部をかき集めてつくりだした資金を、この積立金が消し飛ぶこともかえりみずに、投機的に運用する、これが、彼らのCLO売買の階級的意味である。
 これは、日本の権力者がアメリカ権力者と安保同盟を結び、――両者の対立をはらみつつも、――アジアにおいて覇権の確立を狙う国家資本主義国中国に対抗する、という利害の一致にもとづいて、アメリカ帝国主義による国際的な金融的支配の構造を支えているからなのである。すでに、アメリカは世界最大の債務国と化している。この国の貿易赤字財政赤字は累進的に増大している。日本の諸独占体は、このアメリカの金融市場において、社債国債やその他の金融商品(CLOなど)を購入し続けてきた。CLOの全世界での発行数の15%を日本の金融諸機関が保有しているのは、その最たるものである。機関投資家とよばれる生保、投資銀行、年金積立行政法人(GPIF)などが、アメリカの債券市場で国債やCLOなどの証券に運用資金をつぎこむ、ということは、日米間をとる限りでいえば、たえずアメリカの双子の赤字を日本がファイナンスする、という資金の循環がかたちづくられていることを意味するのである。これこそが、アメリカが巨額の債務の超過におちいることによってたえずうみだされるアメリカドルへの信用の低下=ドル暴落の危機が、日本(中国、アジア諸国、欧州諸国)から資金が融通されることによって、のりきられてきたこと、すなわち、ドル基軸通貨体制=ドル支配体制が維持されてきた根拠なのである。
 だが、日本、東アジア、中国などの債権国が、天文学的な数値の財政赤字貿易赤字を抱えるアメリカを、国債証券化商品などを購入することによってファイナンスする、というこの構造は、あくまでも、アメリカ政府によって国債の償還がなされるという信用が基礎となる。まさにこのゆえにこそ、FRBは、アメリカ国債の無制限の買い入れに踏み切ったのである。すなわち、国債の償還のための資金をふくめて、アメリカの国家財政資金にかんしては、自機関がこれを保障する、という姿勢を、このアメリカ金融当局はしめしたのである。
 いま、新型コロナウイルスの感染の拡大とこれにたいする政府の措置に規定されて、資本のもとでの生産、流通、消費が収縮し、ジャンク債やレバレッジドローンやまたCLOなどが不良債権と化す危機がうみだされている。この危機をくいとめることが、すなわちドル支配体制の基盤の崩壊をおしとどめることが、FRB国債の無制限の買い入れやジャンク債までもの購入にふみきった彼らの狙いなのである。 (二〇二〇年七月七日 丹波 広)

松代秀樹編著『コロナ危機との闘い 黒田寛一の営為をうけつぎ反スターリン主義運動の再興を』刊行

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「資本の過剰」という分析について

 新型コロナウイルス感染症の蔓延という社会的状況に規定された現下の経済的現実を、「資本の過剰」にかんする本質論的規定(よりたちいって言えば、産業循環を明らかにするところの・本質論のなかの現実形態論的規定)を適用して分析してよいのか、という質問をうけた。すなわち、いま、需要も生産も減退し、生産設備の過剰というかたちで資本の過剰が現出し、労働者が首をきられるというかたちで労働力の過剰があらわとなっているのであるが、これを、産業循環における恐慌時を概念的に規定する、「資本の過剰とこれにもとづく労働力の過剰」と規定してよいのか、ということである。
 この規定は、現下の経済的現実には、直接的には妥当しない、と私は考える。
 いま、諸企業にかんして、需要の減退から生産の縮小が生じている、ということではない。政府が労働者を職場に来させるな、とやったことから、生産の縮小が生じた。(また同時に、商店に買いに行くな、遊びに行くな、とやったことから需要が減退した。)新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために政府が実施した措置、この政治的要因にもとづいて、資本のもとでの生産・流通・消費の縮小が、一挙に同時に生じたのである。この意味で、資本と労働力とが一挙に同時に過剰となったのである。このことは政治的要因にもとづくのであって、産業循環の論理を直接的に適用して分析することはできない。現下の経済的現実を分析するためには、産業循環にかんする諸規定は直接的には適用限界をなすのであって、もっと具体的に分析しなければならない。いま、資本の過剰と労働力の過剰との同時的惹起というように、恐慌と同じような現象がおきているのであるけれども、これは、産業循環にもとづくものではないからである。
 飲食店が店を閉める、というのも、需要が減退したからではない。政府が閉めろ、と命令したからである。飲食店は、料理を提供するというサービスを生産し販売し、それを客が消費するのであるからして、店を閉めるということは、そのサービス商品の生産・販売・消費の停止を意味する。
 いまおこっている事態は、これまでにない新たな事態なのであり、そうであるからして、政治経済学的な諸規定を現実的に適用して、具体的に分析しなければならない。一定の規定を現実に妥当させて・これを規定する、というわけにはいかない。
 いま起こっている事態は、産業循環にもとづくものではない、というようにわれわれが把握することそれ自体、われわれは、直面する経済的現実を、産業循環にかんする諸規定を適用して分析するがゆえになしえているわけである。しかし、このことは、この現実をわれわれが産業循環にかんする諸規定をもって直接的に概念的に規定することとは、異なるのである。            (二〇二〇年七月三日 松代秀樹)

ゾンビ資本主義 終わりの始まり――アメリカのシェールオイル大手・チェサピーク破綻の意味

 6月28日に、アメリカのシェールオイル大手のチェサピークエナジーが経営破綻した。3月末時点の負債総額は95憶ドル(1兆100億円)にのぼる。法的整理によって約70憶ドルの負債を削減する。つまり、現時点で破産手続きをしても、25億ドル(2,600憶円)の債務不履行となるわけである。アメリ連邦準備制度理事会FRB)が4月9日にジャンク債(投資不適格債 格付けBB以下の社債)の購入を開始した。このことによって、シェールオイル企業が破綻必至である、という情勢をあたかものりきることができるのではないか、という見通しが語られていた。がしかし、それは幻想である、と露わとなったのである。
 アメリカ政府・FRBの思惑は、直接にはシェールオイル企業の採算割れが40ドル/バレルであるから、一時WTI原油5月先物価格が-36ドル/バレルに史上初めて達したほどまでに原油価格が下落していることからして、シェールオイル企業が次々と経営破綻する可能性が高まったこと、これを何としても回避することにあった。こうして、アメリカ政府・FRBは、デフォルト(債務不履行)におちいっているにもかかわらず、ただ、財務上で資金を継ぎあて、経営破綻することを先のばしする、つまり死に体のままで存続させようとしてきたのである。ゾンビ企業と化したままだ。
 シェールオイル企業だけではない。ジャンク債を発行し、これを売却することによって資金調達をすることに依存しているあらゆる諸企業を、直接に資金繰り援助でもって支える、という驚くべき方策をFRBはとった、ということなのである。だから、これをわれわれは、アメリカ政府がみずからの主導のもとに、ゾンビ資本主義と化すというかたちで、米欧日の帝国主義経済を延命させることに踏み切った、と暴露した。だが、しかし、今回のチェサピークエナジーの経営破綻という事態は、彼らの延命策の破綻=終わりのはじまりである。
 そもそも、たとえ、FRBが、シェールオイルその他の財務が悪化した諸企業に社債(ジャンク債だ)を起債させ、これを買いとろうとしても、不良債権が優良債権になるわけではない。消失した商品需要、つまり原油需要を創出することは不可能なのである。債務は、膨れ上がる。チェサピークは現時点においてすべて債務を整理しても25億ドル(2,600憶円)の債券が紙切れと化すわけである。諸企業も膨大な負債を負い続け、さらに時間とともに膨れ上がり続けるのだから、とてもゾンビ企業として生き(?)続けられるわけがない。諸企業は多額の債務に圧倒されて支払い不能に陥り始めたのである。
 いや、いまや時限爆弾ともいうべきものがその規模を膨れ上がらせつつある。投資不適格級の諸企業は資金調達をローン(銀行からの融資)でおこなってきた。その場合に銀行は格付けでBB以下の企業にたいしてはレバレッジドローン(高金利)というかたちで貸し付けている。しかし、その際に銀行は、企業に資金を貸し付けると、ただちに、このレバレッジドローンを、これを担保として組成された金融商品に組み替え、売却してきたのである。これが、CLO=ローン担保証券というハイリスク・ハイリターンの――債権を証券化するという金融技術なるもので開発された――金融商品である。だから、銀行はもはや企業を破綻させるにもその企業の債務整理を簡単にはできない。ジャンク債(社債)も債券の上場投資信託ETF)に組み込まれていて、その整理などといっても複雑さを増している。
 3月末にアメリカ債券市場が暴落した。この事態に驚愕したFRBがジャンク債、CLOまでをも買い取ることにふみきった。これは全企業を国家=中央銀行が資金を注入して支えるという意味をもつ。がしかし、FRBがジャンク債やCLOを買いとり、こうすることによって、債券価格・株式価格の暴落という金融市場の崩落を阻止する、という思惑は、早晩破綻するだろう。膨大な数にのぼる投資不適格級の企業や、フォーリンエンジェルとよばれる、BBBから格付けを落とされ非投資適格級とされた企業を、すべてFRBが資金注入によって支える、などというのは、実質上、公的管理下におくに等しいのだからである。だが、彼らはそうせざるをえない。これは、政府・FRBアメリカ経済の国家的な統制にふみきることを決断したものである、といわなければならない。そのようにはあらわとならないように、である。「自由な資本主義市場経済」が続いている、と見せかけるために。なによりも、金融市場での投機的な資金運用によって金融活況を意図的にうみだし、金融収益を金融資本が獲得する、そのような国家独占資本主義の生き残り策を続けていくために。
 コロナ危機の直撃を受けて解雇され、絶望し自死さえする労働者・勤労者がいる。この状況においてもFRBに資金を融通されながら、ヘッジファンドは、やれ「ビッグ・ショート(空売り)」だの「プットオプションリスクヘッジのために、「ある日時に売る権利」を購入すること)」だのという投機手法によって、このコロナ危機の3月以来の、株や債券の暴落を利用して数千億円の利益を手にしているのだ。こうしたヘッジファンドを、アメリカ帝国主義権力者は、国際金融市場で自国の金融支配構造をつくり維持する先兵として活用し続けている。東アジア通貨危機を仕組んだアメリカ政府とヘッジファンドのJ・ソロスとの関係に端的なように、である。だが、こうしたアメリカ政府・FRBが人民にその危機のりきりの犠牲を転嫁することを労働者人民は団結して打ち砕こう。ゾンビ企業として巨額の負債を負わされ続けることに耐えられず、諸企業は安楽死を選択しはじめた。ゾンビ資本主義化というかたちでアメリカ帝国主義が金融支配をしつづけようとしても、そのあがきは幻想なのである。   (二〇二〇年七月五日 丹波 広)